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長寿命住宅について(続500年木造住宅)

 住宅を長年維持することができる最大の条件は、その住宅がその所有者や社会にとっての効用を持続できることではないでしょうか。住宅所有者や社会的効用を持続するために必要な事は、物理的な耐久性だけではないと思います。住宅の物理的な長寿命化は結果であって、その要因となるものは社会的な耐久性です。人々が住宅の提供する効用を享受したいと思えば、その住宅に不足する構造耐力や、防耐火性能などを補強して、利用することになります。逆に、所有者にとって気に入らない貧しいデザインの住宅であれば、機能や性能が一定レベル以上であっても住宅は取り壊され、建て替えらます。


 「200年住宅」が提起されて、[柱を太くする][高気密高断熱にする]など物理的に住宅の性能を高くし、更に[住居経歴を表示する]などとなっていますが、その住宅を大切にいつまでも維持したいと思うのはこれらの条件とは関係ないと思います。日本で平均築26年で壊されてきた住宅は、物理的には問題は無かったものが殆どです。では何故壊されてきたのでしょうか。それは所有者にとっての効用や社会的に効用を失ったからに他なりません。ですから住宅の寿命を延ばすためには、所有者や社会にとっての住宅の効用を長期化できる対策を講じる以外にはないと思います。


 その為には、住宅が常に高い需要に支持されるとともに、住宅需要者が現在の住宅所有者以上に高い所得者であったならと思います。住宅所有者は売買差益が得られるので、住宅を積極的に販売しようとします。自ずと住宅の取引価格は上昇します。つまり住宅の資産価値が上昇するのです。


ストリート・オブ・ドリームス

シアトルで2006年に開催されたストリート・オブ・ドリームスで公開された住宅の一つ。アメリカでは住宅の資産価値を上げるという考え方が一般的にも浸透している。

500年木造住宅(後編)

 都市は、そこに住む人々の暮らしの歴史の積み重ねとして育てられます。住宅を選ぶ際の選択肢の中で[ロケーション]が重要視される理由は、多くの人たちが[ロケーション]から得られる満足感に価値を置いているからです。人々は住宅を購入して生活の拠点を構えますが、そこで求めるものは、その都市から得られる文明と文化の積み重ねで、住宅の内部と外部に関わる生活環境の全てです。


 イギリスの第二の工業都市として栄えたビートルズでも有名な都市リバプールは、町全体の衰退化が進んでいます。しかしリバプール郊外の、石鹸王ウイリアム・レーバーによって19世紀末に建設された工業町ポート・サンライトは、現在でも高い需要に支えられて、投資対象とされるほど資産価値が上昇する住宅地として維持されています。それはポート・サンライトというガーデンビレッジが、豊かな生活環境を保全し続ける都市経営システムを持っているからです。


 資産価値を守ることができる都市経営がされている土地に、人々が住宅を購入していることも[ロケーション]を重要視していることの証明となるでしょう。ポート・サンライトに建てられている住宅と同じ程度の品質の住宅は、リバプール市内にも無数建てられていましたが、その多くは衰退していきました。それは住宅単体では、そこに住む人たちの住生活要求が満たされなかったからです。人々が住宅地に求める生活要求は3つあります。


ポート・サンライトの住居

ポート・サンライトの住居。当初建てられた900戸にはサンライト石鹸会社の従業員とその家族だけが住んでいたが、今ではその町並みの素晴らしさが大変な価値を生み、理想の住環境がある高級な住宅街として約三分の一が企業外の人間で構成されている。

500年木造住宅

 福田元首相が自民党の政務調査会住宅土地調査会長時代に「200年住宅」を提起したのはご存知の方も多いと思います。まだ現実のものとはなっていませんが、実現に向けて歩き出しています。そんな中、「500年住宅」なんていうとそんなものはあり得ないと笑われるかも知れませんが、それは日本の中に限った話でありまして、世界に目を向けて見ると珍しくない事で、200年住宅は欧米では普通にあります。「高温多湿で昔からの木造住宅国の日本ではあり得ない」と否定する人達がいるだろうと思いますが、欧米では、その国の人たちが存続させて半永久的に使い続けている例は実際に数多くあります。


 北ドイツやノルマンディー、ブリティン島などの歴史ある町には、500年以上守り育てて使われている木造住宅の街並みの例をいくつも見ることができます。例えば、日本でも古い街並みとして知られてきた、英国の劇作家、詩人であるシェイクスピアの生誕地、エイヴォン川のほとりにつくられたストラッドフォードという町があります。そこでは、シェイクスピアが活躍していた頃、劇場、教会、学校がいくつもあり、町全体はハーフティンバーやブラックアンドホワイトと呼ばれるオーク材でつくられた木造の建物が建てられ、今でも、当時栄えていた頃の住宅や学校、商業建築物で多くの人達は生活しています。


 これら500年以上使われ続けられてきた木造建築物は建てられた当時、この地方では優れた代表的な建築物で、時代を超えた現在でも憧れの建築物となっています。それらは時代が経ち、進歩していく中での生活の変化に合わせて、リモデリングを繰り返しながら人々に使われてきました。


シェイクスピアの生家

ストラトフォード・アポン・エイヴォンにあるシェイクスピアの生家。シェイクスピアが誕生したとされている部屋もあり、当時の毛織のカーテン、ベッドなどが忠実に再現されており見学も可能。

ヨーロッパやアメリカの住宅照明

 私たちの住んでいる日本の住宅の照明器具の多くは、蛍光灯が使われています。電球色(赤黄色っぽい暖色の明かり)も多く使われてきましたが、昼白色(白っぽい寒色の明かり)が多いようです。ヨーロッパやアメリカのほとんどの家では逆に白熱灯の照明が多いようです。

 また、日本では夜になると、ほとんどの家ではカーテンを閉めます。外からみると、少しの明かりだけが漏れているように見えます。海外では通りからみると、それぞれの家の窓から、白熱等の明かりがきれいに映し出されます。アパートやマンションも、日本のように白色と電球色が混ざって、不快に見える(みなさんはどう感じますか?)ことはあまりありません。きれいな夜景はヨーロッパの人たちの明かりに対する良心なのでしょうか。

ヨーロッパやアメリカの住宅照明01

イギリスにおける住宅政策

 イギリスにおけるの一般的な住宅は、平均的に見て建築後百年以上経過した建物が多いのですが、特にロンドンなどは、19世紀末から20世紀の初めに建てられたものが大半です。その中でも市内の中心部では、18世紀に建てられたジョージアン様式の建物が多く残されています。そういう年輪を重ねた建物やその集まりである集落や街路には、特別の風格がありいつまでも見飽きることのない建築美があります。イギリスは、サッチャー女史が政権の座に就いた1980年代から、アーバン・リニューアル(都市の再生)ということが盛んにおこなわれるようになりました。日本と違ってイギリスの都市は、どこでも均一的に近代都市としての都市を再生するという基盤ができていました。したがって再生が可能となったのです。

 この都市の再生で何が行われたかといいますと、百年以上もたった一般住宅の改造に特別の融資がサッチャー政府の政策として行われました。すばらしい事に、古い家は取り壊すことなく、またそれを修復改善することによって、二重の経済効果を生むことができたのです。これが現在日本でおこなわれているスクラップ・アンド・ビルド方式だと、古い建物をスクラップにすることで、廃棄物の処理に無駄な費用がかかるばかりでなく、家は新しくなるが伝統的な美しさは確実に失われていきます。これは二重のロスと言えるのではないでしょうか。物質的な原材料に恵まれず、しかも古い歴史的環境で暮らす私たち日本人にとって愚かなことと言えるのではないでしょうか。

イギリスにおける住宅政策01

ヘンリー8世の王妃等を含む7人が悲劇的な最後を遂げたロンドン塔の中の『タワー・グリーン』。500年を経た今でも、街のシンボルとなっている。

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